ジブンライフ

「自分らしい人生」や「経営」をテーマに理論や知識について書いてます。

お金だけでは幸せになれない。とある理論が教えてくれること

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本当に自分を幸せにしてくれるものはなにかということを理解しなければ、幸せについて考えることはできない。

多くの人が幸福になりたいと思って生活しているにも関わらず、少なくない人たちが不幸なキャリアや人生を歩んでしまっている。

これは本当に自分を幸せにしてくれるものを理解していないからである。

この記事で紹介する「動機づけ理論」は、本当に人を幸せにしてくれるものはなにかを教えてくれる。

人は報酬や地位など目に見えやすい証を求めてキャリアを選択していくが、実はそれで望むような人生を送れることはなく、他に幸せの要因があるというのだ

 
今回もハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・M・クリステンセン教授の著書「イノベーション・オブ・ライフ」の内容をもとに説明していく。この本は人生をよりよく過ごすための理論を教えてくれる本である。

この本の「なぜ人生の選択は理論を用いるべきなのか」という根本的な主張に関しては人生の決断をするときには「理論」を使うとうまくいくを参照していただきたい。

理論が登場し、取っつきにくい印象を抱くが、できる限りわかりやすく説明していく。概要と結論が知れればいいという方は「不満足要因でキャリアを選ぶ人は不幸になる」あたりまで飛ばしていただいても問題ない。

インセンティブ理論

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インセンティブ理論は報酬を重視する

なにが人を動かすか、やる気を出させるのかという動機付け理論に関して、大きく分けて2つの理論があげられる。

1つがインセンティブ理論と呼ばれるものだ。簡単に言ってしまえば、人を動かすのは報酬であるという主張の理論といえる。

世の中ではこの考え方が当たり前のように受け入れており、多くの人は疑問すら抱かない。

この理論を信奉するようになったのは、わたしの学生だけではない。多くの経営者がジェイセンとメックリングの基本的な考え方を取り入れている*1

インセンティブ理論では説明できないことがある

しかし、インセンティブ理論では説明することができない事象が発生しており、この理論はすべてにおいて信頼できるとはいえないと述べている。

要するに、世の中には明らかに報酬を目的とせず、他の「なにか」によってやる気を出したりや幸せを感じている人がいるということだ。

これはインセンティブ理論では説明できない現象であり、そのためこの理論は正しいとはいえない。

世界で最も努力を惜しまず働く人たちのなかには、非営利組織や慈善団体の職員がいる。そのなかには災害復旧地域や、飢饉や洪水に見舞われた国など、これ以上ないほど過酷な状況で働く人たちもいる。彼らの報酬は、民間部門にいれば得られたはずの報酬の数分の一でしかない。それでも非営利組織の運営者が、職員のやる気のなさに困っているという話は聞いたことがない*2

こうした話を聞いて、理想論だと片付けてしまう人は非常に多いが、"現実"にそうしたことが起きている以上、理論として考えるときに無視してしまうわけにはいかない。

それにこの本から学ぶべきなのは、「理想的な」人生をいかに送るかということである。理想論だと思われることから目をそらしていて理想的な人生を送ることができるだろうか

モチベーション理論

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上記のインセンティブ理論の問題を解決してくれるのがモチベーション理論である。

これは人を動機づけているもの、幸福にしてくれるものはお金ではないという考えを持っている。

この理論には、2種類のやる気や幸せに関わる要素があると考えており、それぞれ「不満足要因」と「満足要因」という。

不満足要因と満足要因

2つの要因を簡単に説明すると以下のようになる*3

  • 不満足要因:これがないと不満を抱くが、あるからといって大きな満足を得るわけではないし、やる気を出せたり、幸せになれるわけではないもの。

  • 満足要因:なくても不満は抱かないが、人を心から満足させるもの。高いモチベーションや本当の幸せに大きく関わっている。

不満足要因は「なかったら文句言いたくなるから求めるけど、実は本当に自分を満足させてはいない」という点に注目して欲しい。

 
そしてそれぞれの要因には、以下のようなものがあるという。

  • 不満足要因:ステータス、報酬、職の安定、作業条件、企業方針、管理方法

  • 満足要因:安全で快適な職場環境、上司や同僚との良好な関係、家族を養えるだけの給料、自分の仕事の社会的意義ややりがい

この理論において興味深いのは、報酬が不満足要因であるということである。つまり、所詮報酬は本当の意味で人を幸せにはしてくれないということである。

もちろん、満足要因に「家族を養えるだけの給料」があるため、「まったくお金がなくたっていい」と主張しているわけではない。

報酬は間違いなく衛生要因(不満足要因のこと)だ。これをしっかり理解しておく必要がある。報酬をどんなに工夫したところで、せいぜい社員が報酬のせいで同僚や会社に不満をもたなくなる程度でしかない*4

不満足要因でキャリアを選ぶ人は不幸になる

モチベーション理論によって、報酬は不満足要因であり「不満足だと感じることはないが、満足はさせてくれない」ものだということがわかる。つまり、報酬は本当に私たちを幸せにしてくれるというわけではないということがわかった。

しかし世の中の多くの人は、ステータスや職の安定などといった不満足要因を主な判断基準としてキャリアを選択している。特にお金を基準にしているという人は多いだろう。

 
ほぼ全ての人間が幸せになりたいと願っているにも関わらず、不幸な人がたくさんいるのはなにが人を幸せにしてくれるのか知らないからである

多くの人は報酬やステータスといった不満足要因こそが自分を幸せにしてくれると信じている。

しかし不満足要因は人生に不満を抱かせないものの、本当に満足させてくれるわけではない。「自分の人生はなにかが足りない」というとき、足りていないのは満足要因かもしれない。

本当に私たちを幸せにしてくれるものは、家族や同僚との人間関係や自分の仕事の社会的意義、やりがいなどではないだろうか。

「仕事に不満がある」の反対は、「仕事に満足している」ではなく、「仕事に不満がない」だ*5

人生は簡単には引き返せない

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満足できるキャリアではなく、不満足しないキャリアを選択することは現実的な選択であるように思う人は多い。

また、一旦は不満足しないキャリアを選び、安定してから満足できるキャリアのために挑戦すればいいと考える人もいる。

しかし人生は簡単には引き返せないと本書は示唆している。

「意義のある仕事や、心から愛せる仕事をしたらどうだ? そのためにここに(ハーバード・ビジネス・スクールのこと)来たんだろう?」。「なあに、心配するな」と答えが返ってきた、「たった二年ほどのことだ。ローンを返済してふところ具合がよくなったら、本当の夢を追いかけるさ」。
これはあながち無理な理屈でもなかった*6

不満足要因を重視するキャリアのほうが、現実的で素晴らしいものだと世の中では思われている

それこそ就活生が業種や職種に関わらず、大企業を志望したりすることはこれを象徴しているといえる。

彼らはこうした仕事についたおかげで、学生ローンを完済できた。住宅ローンの返済のめどをつけ、経済的に安泰な暮らしを手に入れた。だが二年ほど経ったら本当に情熱の持てる仕事に戻るという当初の誓いは、何かと理由をつけて先延ばしにされた。「あと一年だけ……」「ほかに何をすればいいかわからない」。その間も収入は増え続けた*7

やりたいことはあとでやればいいと思う人は多いが、結局そのための決断できる人は少ない。最初にやりたいことをやらなかった人が、あとから今まで積み上げてきたものを捨てて挑戦しようと思うだろうか

もちろん、そうした選択をできる人はいるし、それは素晴らしいことで賞賛されるべきである。しかし、それほど多いとはいえないだろう。

まとめ:お金は本当に人を幸せにするのか?

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  • 動機付け理論はどうしたらキャリアで成功できて、本当に幸せになれるのかを教えてくれる
  • お金だけを追い求めても、その効果は不満を抱かせないという程度のものであり、人生に満足を与えてくれるわけではない
  • 不満足要因(ステータスや報酬)でキャリアを選択していては幸せになれない
  • 多くの人が幸せになりたいと思っているのになれないのは勘違いをしているから
  • 人生は簡単には引き返せない。最初は不満足要因、次に満足要因を求める……というのは上手くいきにくい
  • 人生は報酬やステータスなど目に見えやすい証だけを求めていてはいけない。本当に人生を満足させてくれるのはなにかを理解し、それを求めるようにしなければ真に幸せにはなれない

少し文字数が多く、複雑になってしまったかも知れないが、結論は至ってシンプルで「人はお金などの不満足要因に注目しがちだが、お金は全てじゃない。やりがいや人間関係などの満足要因を重視して人生を歩むべき」ということである。

なにを当たり前のことをと思う人もいるかもしれないが、「きれいごと」「理想主義」と片付けられやすいこのテーマを理論的に説明していることに大きな意義があるといる。

 
もちろん、好きな仕事をしていたら高い収入を得られることがあるため、高い収入を得ている人が幸せにみえることはある。しかしそれはお金が人を幸せにしているわけではない。相関性と因果性を混同してはいけない。

好きな仕事をしている=収入が高い=幸せ」であって、「好きな仕事」を飛ばして「収入が高い=幸せ」と考えてはいけないということである。多くの人はこれを勘違いしてしまっていると本書は述べている。

 
今回は「イノベーション・オブ・ライフ」の動機付け理論からどのような人生を歩むべきか、なにが人を幸せにするのか説明した。

今後も豊かな人生を歩むための理論について紹介していく予定である。

 
なお、わかりやすく紹介するために用語や表現を改変している関係で、厳密に理論を正しく説明しているとはいえないため、詳細は本書で確認していただきたい。

動機づけ理論についてはエドワード・L. デシの「人を伸ばす力―内発と自律のすすめ」も強くおすすめしたい。

また、この記事では人生そのものとキャリアを若干混同して説明してしまっていることを申し添えておく。

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*1:クレイトン・M・クリステンセン(2012)『イノベーション・オブ・ライフ』翔泳社 p.34

*2:同上 p.35

*3:ハーズバーグの動機づけ要因に基づく。不満足要因は衛生要因、満足要因は動機づけ要因ともいう。本書では後者を用いているがわかりやすくするために改変している

*4:クレイトン・M・クリステンセン(2012)『イノベーション・オブ・ライフ』翔泳社 p.37

*5:同上 p.37

*6:同上 p.40

*7:同上 p.40

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