ジブンライフ

自己啓発的なテーマを根拠(エビデンス)をもとに取り扱うブログ。

家族や友達とのつながりの大切さを教えてくれる理論の話

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家族や友達との関係は人生において特に大切であることはいうまでもない。

しかし、仕事に忙しかったり家庭生活や人間関係が上手くいっていたりするとき、ついそうしたことにあてる時間を減らしてしまったりしないだろうか。

これは致命的な間違いであり、すぐにはなにもも起こらないものの、いずれ深刻な問題を引き起こす。あなたがいざ誰かに頼りたいというとき、そこには誰もいないということすらある。

なぜ私たちは家族や友達といった身近なものの大切さを忘れて、目に見えるようなものばかり求めてしまうのだろうか

また、大切なものとの関係を保ち続けるためにはなにを意識すればいいのだろうか

 
ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・M・クリステンセン教授の著書「イノベーション・オブ・ライフ」をもとに紹介する。この本は人生をよりよく過ごすための「理論」を教えてくれる本である。

本書をもとにいくつもの人生を豊かにする理論を紹介しているので、興味のある方は読んで欲しい。

複雑な理論を抜きに、知っておくべきことだけ知りたいという方は「将来のために家族や友達とのつながりを大切にする」から読んでいただければと思う。

良い資本と悪い資本の理論

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良い資本と悪い資本の理論」というものがある。

この理論における良い資本とは、新規事業の初期段階でいきなり最初の戦略に大金を投資するのではなく、できるだけ早く少ない資金で実行可能な戦略を見つけるようにすることである。

わかりにくいので「いきなり大もうけをするために大金を使うのではなく、最初は少額の投資で、少しでもいいから利益が出るようにするべき」と理解するといいだろう。

しかし多くの企業は、目の前にある最初の戦略に注目してしまい、初期段階でも多額の投資を行ってしまう。

 
アマル・ビデ教授の著書『新規事業の起源と進化』によると、最終的に成功した企業の実に93%は最初の戦略を断念し、新しい戦略に投資することで成功を収めたという。

最初の戦略が失敗したあと立ち直ることができたのは、資金がまだ残っていたからだ。そのため方向転換をすることができた。

失敗してしまった企業は、最初の戦略に資金をつぎ込んでしまっている。しかしその戦略は間違っていることが多い。

 
これだけでは、理論の説明としては不十分だが、これからお話しすることに必要なことは十分に説明できたので、次に実際に企業がやってしまいがちな失敗を紹介する。

事業を早く大きく成長させるために投資を行い、利益を上げる方法はおいおい見つければいいと考える。[……]この道を歩もうとして失敗した企業の例には事欠かない。このようにして近道をしようとする企業は、ほぼ必ず失敗する*1

必要になったときに準備するのでは遅い

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上記の理論が守られないことが多いのは、大手投資家や成功している既存企業が新しい成長事業への投資を検討するときだという。

 
これは三段階のプロセスで説明していくとわかりやすい。

  1. 企業の最初の戦略が上手くいかない可能性が高いため、投資家は主力事業が頭打ちになる前に、新しい事業に取り組まなくてはいけない。しかし主力事業がそれなりに調子がいいために、先延ばしにしてしまう

  2. ついに主力事業が成熟して頭打ちになると、投資家はもっと早く新しい事業に投資しておくべきだったと後悔する。そうすれば新しい収益源が生まれて、スムーズに既存事業とバトンタッチできたのにと。

  3. 資本の所有者は新規事業に莫大な投資をする。リスクもプレッシャーも莫大なものとなる。しかし間違った戦略をもとに強引に進んでしまったために失敗することが多い。

 
この企業の失敗から得られる教訓は、いざ必要になってから準備するのでは遅い、あらかじめ準備をしておかなければいけないということである。

「良い金、悪い金」の理論が説明する因果作用のせいで、ほとんどの企業に審判の日が訪れる。主力事業がつまずくか、頭打ちになり新しい収益源がいますぐ必要になる。だが新規事業への投資を怠ってきた企業は、新しい収益と利益の源が本当に必要になったときには、もう手遅れなのだ*2

本書では利益を「日陰」、新規事業を「苗木」にたとえ、長い時間をかけて物事を育てていくことの大切さを説明している。

もっと日陰が欲しいと思ったそのときに、苗木を植えなくてはいけない。苗木は一夜にして日陰を生み出せるほど、早く大きく成長できないのだから。日陰をつくるほど高く育つ木がほしいなら、長年かけて辛抱強く育てる必要がある(同上 p.98-99)。

将来のために家族や友達とのつながりを大切にする

目に見えるものを優先してはいけない

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以上のことはどのように人生に活かすことができるだろうか。

私たちも知らず知らずのうちに、わかりやすく利益をもたらしてくれるものばかりに注目してしまう

 
例えば、旅行中にも電話をする、有給休暇なんてもってのほか、どこにいくにもスマートフォンが手放せないというように、仕事や社会に繋がっていることばかり重視することがあげられる

スケジュールが詰まっていて、家族や友達と十分な時間が取れないことを、彼らは理解してくれるだろうと多くの人は考えてしまう。だって家族や友達は自分の成功を願ってくれているのだからと。

だから、家族と出かけなくなったり、友達からの連絡を無視してしまったりする。

 
この友達や家族とのつながりこそが、企業でいう将来につながる投資なのだ

目の前にあるものばかりにとらわれて、将来利益をもたらすであろう大切なものへの投資を怠ってしまうことがある。

ほとんどの人は、家族や友達と良い関係を築くことは大切だと知ってはいるが、なぜかそれからかけ離れた行動をとってしまう

さきほどの企業も利益は大切だと知っていたし、利益を求めて行動していたのに、なぜか最終的には損をしてしまった。これと同じことだ

晩年になってから、かつてあれほど大切に思っていた友人や親戚と、なぜもっと連絡を取り合わなかったのだろうと嘆く人が多い。忙しくて、それどころではなかったのだ。だがそのまま放っておいておくと、深刻な影響がおよぶことが多い。
わたしはスティーブのような人を、大勢知っている。黙って話を聞いて支えてくれる人を失い、闘病生活や離婚、失職などの大変な時期を、一人で堪え忍ばなくてはならなかった人たちを。*3

人生への投資を後回しにすることは大きなリスク

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若い人の多くは、人生の投資の順序を好きに変えられると思い込んでしまっている。しかしこれは大きな間違いである。

「いまはまだ子どもたちが幼くて、子育てはそれほど大切じゃないから、仕事に専念しよう。子どもたちが少し成長して、大人と同じようなことに関心をもつようになれば、仕事のペースを落として、家庭に力をいれればいいさ*4」という具合である。

しかし、とある研究結果によると、子どもは3歳までに親がどれだけ言葉をかけるか、どんな言葉をかけるかによってその成長に大きな影響を与えることがわかっている。

私たちが思っている以上に、投資をしなければいけないタイミングは早い。しかも「言葉」という小さな投資が、のちのち大きな利益をもたらすのである。

これは、友人や家族との関係への投資を、成果の兆しが見え始めるはるか以前から行わなくてはいけないという、数多くの例の一つにすぎない*5

時間と労力の投資を、必要性に気づくまで後回しにしていたら、おそらくもう手遅れだろう。キャリアを軌道に乗せようというときには、人間関係への投資は後回しにできると、思いたくもなる。それではいけない。大切な人との関係に実りをもたらすには、それが必要になるずっと前から投資をするしか方法はないのだ*6

まとめ

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  • 人生でも企業でも、いざ必要になってから準備するのでは遅い、あらかじめ準備をしておかなければいけない
  • 私たちはすぐに利益をもたらしてくれるものに注目してしまうが、のちのち大きな利益をもたらしてくれる小さな投資を忘れてはいけない
  • 友達や家族に投資をするということは、すぐに意味があるようには見えないため、後回しにしがちだが、実は人生においてもっとも大きな利益をもたらす大切なものである
  • 友達との関係や家族との触れ合いは「あとからやればいいや」と思うかもしれないが、それでは手遅れになってしまうことがある

企業における理論をもとに、いかに家族や友達とのつながりが大切であるか、またそれをつなぎとめておくにはどうすればいいのかをお話しした。

人はどうしても、つながりを維持することを後回しにしてしまうということを知ったうえで、そうならないように意識して行動することが重要だろう。

ひとまずは昔の友達に連絡をとったり、家族といつもより多く触れ合うといいかもしれない。

 
経営理論をもとに、人間関係について説明したために「投資」や「利益」などの言葉を使った。

そのため友達や家族を打算で利用しているような冷たい印象を持つかもしれないが、あくまでたとえであり、実際は血の通った考え方であることは申し添えておく。

また、良い資本と悪い資本の理論に関しては、ぼく自身も少し理解できているか怪しい部分がある……。

連載:人生を豊かにする理論(イノベーション・オブ・ライフ)

  1. 人生の決断をするときには「理論」を使うとうまくいく
  2. お金だけでは幸せになれない。とある理論が教えてくれること
  3. 人生は計画通りにいかなくてもいい。偶然を意図に変える戦略
  4. 目標達成のためには適切な「資源配分」をしなければいけない

*1:クレイトン・M・クリステンセン(2012)『イノベーション・オブ・ライフ』翔泳社 p.98

*2:同上 p.98

*3:同上 p.102

*4:p.102-103

*5:同上 p.106

*6:p.106

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