ジブンライフ

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クロネコヤマトの理念と規制との戦いの歴史。意見広告に関して

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クロネコヤマトが「日本郵便に対する優遇措置はおかしい」という旨の意見広告が話題になっている。

クロネコヤマト「日本郵便は優遇措置を受けすぎ」全国54紙に意見広告

意外とあまり取り上げられていないが、クロネコヤマトは昔からそうした規制や、政府のやり方と戦ってきたという歴史がある

意見広告ではないものの、新聞に巧妙な広告を打つことで、当時の運輸省(現在の国土交通省)と戦ったこともある。

今回はそうした歴史を簡単に紹介し、最後にクロネコヤマトの変わらない素晴らしい企業風土についてお話しする。

宅配便の規制緩和を巡り、ヤマト運輸が旧運輸省(現・国土交通省)、旧郵政省(現・日本郵政グループ)と対立した際、企業のトップとして先頭に立ち、官僚を相手に時には過激なまでの意見交換をした*1

最初の運輸省との闘い

最初のクロネコヤマトと運輸省との闘いは1986年の8月にまで遡る。

昭和六一(一九八六年)年八月二八日、運輸大臣を相手取り「不作為の違法確認の訴え」を起こした。監督官庁を相手に行政訴訟に打って出たのである。運輸省は慌てたと思う。路線延長の申請を五年も放っておいた理由など、裁判所で説明できるわけはないからだ。*2

当時、トラック運送事業は「道路運送法」という法律で規制されており、それぞれの道路ごとの免許がなければ営業できなかった。

つまり東京から名古屋に運ぶとき、ルートAの免許しか持っていなければ、ルートBは使用してはいけないということもあった。

小倉昌男氏は『小倉昌男 経営学』のなかでこれを「おかしな規制」と表現している。

特に運輸省の免許付与の基準に問題があるといい、クロネコヤマトはこの規制によって事業の拡大は難しいものになっていた。

最終的に、路線延長の申請を五年も放っておいた運輸省に対し訴えを起こし、免許を得て、全国展開を進めた。

運輸省との闘い再び

クロネコヤマトは、宅急便の取扱荷物のサイズをSサイズとMサイズに加えて、さらに小さいPサイズを作り、価格体系を変えて展開しようとした。

しかし運輸省に打診すると、拒否されてしまったという。

運輸省は、宅急便と路線トラックは同じものだと認識しており、路線トラックと同じ認可運賃を適用すべきだと主張したのだという。

おかしな話ではないか。そもそも運賃を決め、荷主から収受するのは事業者、つまりヤマト運輸である。運輸省は不都合がないかをチェックするだけで、どうしろと指示する権限はないはずである。宅急便の独自運賃を受け付けないというのは、民を馬鹿にしたお上意識の思い上がりだろうとと思ったら、また無性に腹が立ってきた*3

このあと駆け引きのなかで、宅急便の独自運賃の申請を受理したものの、一向に処理をしてくれないということが起こった。

そこでマスコミを利用し、運輸省を動かそうとした。

なんと、まだ運輸省の認可が下りていないのにも関わらず「Pサイズの発表と実施時期は6月1日である」と新聞広告で大々的にアピールしたのだ

しかし運輸省は申請を無視したという。

そこで、5月31日に「Pサイズの販売は運輸省がまだ認可してくれないため、延期せざるを得ない」という広告を打った。

世論も支持したこともあり、ついにヤマトの申請は認可された。

運輸省に限らず一般に役人は、新聞紙上に活字となって載ることを極度に怖がる修正がある。だから新聞やラジオ、テレビを通じて行政の非を追求するのが、きわめて有効である。それには自分の主張をマスコミに正しく理解してもらう必要がある。新聞広告を使ったのはそのためである*4

以上の歴史に関しては非常に簡潔に説明しているため、語弊があるかもしれないことを申し添えておく。

受け継がれるヤマトの企業風土

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クロネコヤマトは日本が誇るべき企業であり、そこには素晴らしいビジョンや企業風土がある

ヤマトには「ヤマトは我なり」という社訓があり、一人ひとりがヤマトの一員だという意識が強っている。

一橋大学名誉教授・早稲田大学特命教授である野中郁次郎氏の著書『全員経営 』でもヤマトは一人ひとりが経営者意識をもつ全員経営の企業であると紹介されている。

そして小倉昌男氏が亡くなって10年たった今でも、その素晴らしい考え方は廃れることなく継承されているという。

ヤマトには宅急便の生みの親で、常に「世のため人のため」を唱えた小倉昌男・元社長の「小倉イズム」が基本理念として継承されている*5

 
小倉昌男氏は規制との闘いに関して以下のように述べている。

ヤマト運輸は、監督官庁にたてついてよく平気でしたね、と言う人がいる。別に楯突いた気持ちはない。正しいと思うことをしただけである。あえて言うならば、運輸省がヤマト運輸のやることに楯突いたのである。不当な処置を受けたら裁判所に申し出て是正を求めるのは当然で、変わったことをした意識はまったくない*6

もちろん今回の意見広告は自社の利益のためでもあるだろうが、決してそれだけではない。

前提として自分たちの主張が正しいものであり、正しいことは貫くべきだという信念があるからこそ、堂々と意見広告を掲載したのだろう。

そしてこうした動きは他社や消費者にも恩恵をもたらし、「世のため人のため」となるのではないだろうか。

*1:小倉昌男 - Wikipediaより引用

*2:小倉昌男(1999)『小倉昌男 経営学』日系BP社 p.162

*3:同上 p.165

*4:同上 p.168

*5:野中郁次郎・勝見明(2015)『全員経営』日本経済新聞出版社 p.103-104

*6:小倉昌男(1999)『小倉昌男 経営学』日系BP社 p.162 p.163

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