ジブンライフ

自己啓発的なテーマを根拠(エビデンス)をもとに取り扱うブログ。

長続きしない恋愛、夫婦のすれ違い。相手に尽くすことの本当の意味

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恋愛が長続きしない、家庭で妻とすれ違ってしまう。こうした問題を抱えている人は多い。

なによりも問題なのは、自分は相手に尽くしているつもりなのに、相手はそう感じていなかったり、怒り出したりしてしまうことだ

こうした問題は、相手の片づけたいと思っている「用事」をちゃんと理解していないためにおこってしまうという。

 
企業でも、お客さんが本当になにを求めているのか理解することは難しい。だからこそマーケティングなどの努力をしている。

人生でも同じで、相手が本当になにを求めているのかよく考えなければいけない。私たちが「こうしてあげればいいんでしょ」と考えていることは間違っていることが多いだからだ。

 
今回もハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・M・クリステンセン教授の著書「イノベーション・オブ・ライフ」をもとにこの問題について説明する。この本は人生をよりよく過ごすための「理論」を教えてくれる本である。

個人的に、この記事の内容は今までのもののなかでも大切な内容だと思うし、きれいにまとまっているため、ぜひ読んでいただけたら嬉しい。

相手が本当に求めているものを理解することは難しい

ミルクシェイクはおいしいから買われているのではない

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とあるファストフード店が、ミルクシェイクの売り上げを伸ばそうと試行錯誤していた。

主に価格の変更や味の改善などに取り組んでいたがさっぱり成果はあがらなかったという。

 
そこで、お客さんが本当に求めているものはなにか改めて考えてみることにした。

調べてみると、どうやらミルクシェイクが購入されているのは、早朝の時間帯に集中しているらしい。

早朝にミルクシェイクを買っていく人は、決まって車に乗っていて、注文するのはミルクシェイク単品だった。

 
ミルクシェイクを買うお客さんが求めているものは、通勤前に運転しながら食べれて*1、小腹を満たせるものだということがわかった。

バナナやドーナツは、お腹は満たせるし、片手で食べれるため運転中にも最適である。しかし、ぼろぼろしたり、手がべとべとになったりしてしまう。

対してミルクシェイクは片手で気軽に飲めるし、手は汚れないし、飲み終わるのに時間がかかるから長い間楽しめる。

 
こうしてお客さんの本当に求めているものはわかれば、価格を安くしたり、味をよくすることが売り上げをあげるためにそれほど必要でないことがわかるだろう。

売り上げをあげたいのならば、長い時間飲めるように量の多いものを用意したり、忙しい通勤客のために、素早くミルクシェイクを手に入れる仕組みをつくったりすることのほうが好ましい。

用事の理論:相手が片づけたい「用事」とは

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本書であげられているミルクシェイクの例から以下のようなことがわかる。

相手が本当に求めていることを理解せずに尽くしていても相手は満足しない(売り上げは上がらない)。

相手が求めていることに答えるように尽くせば相手は満足する(売り上げが上がる)。

 
この「相手が本当に求めていること」を本書では「片づけたい用事」と表現し、用事の理論に当てはめている。

理論といってもそれほど難しいものではなく、ようするに相手が片付けたいと思っている「用事」はなにかを考えようということだ。

用事とは先ほどのミルクシェイクの例でいえば「運転中に食べて小腹を満たす」ということだろう。

相手はどんな用事を片づけたいのかを理解することが、相手に尽くすための第一歩である。

「用事」を理解しないからすれ違う

恋愛が長続きしないのは彼女彼氏の「用事」をわかっていないから

理論を説明し終えたため、次に本題に入る。なぜ恋愛が長続きしないのか、夫婦がすれ違ってしまうのかということだ。

これは相手の「用事」を正しくしていないためにおきてしまう問題である。

 
彼女は遊園地に行きたいという用事を抱えているとき、彼氏がどんなに素晴らしい講演会に連れて行っても彼女は喜ばない。それがどんなに価値があってお金のかかるものだとしてもだ。

しかしこの例における彼女の用事は簡単に理解できる。こんな理由ですれ違ってしまうカップルは滅多にいないだろう。問題なのは発見することの難しい用事が世の中にたくさんあるということだ。

用事は本人すらもわからない

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用事の理論の難しいところは、本人ですら自分の求めている用事がわかっていないということだ。

ミルクシェイクを買った人も、自分が「運転中に食べて小腹を満たす」という用事を抱えていることを知らない。

買うときに意識してそんなことを考えてはいないし、「どうしてミルクシェイクを買ったのですか?」と聞いても「いや、飲みたかったから」として言えない人が多いだろう。

ミルクシェイクの購入者と同様、あなたと妻は、それぞれが個人的に片付けようとしている基本的な用事を、いつもうまく説明できるとは限らない。ましてや、妻があなたを雇う用事を説明するとなると、なおさら難しい*2

 
用事はわかりにくい。だからこそ間違ったものを用事だと認識してしまうことがある。これがいわゆる恋愛などにおける「すれ違い」であるといえる。

この用事を理解するには、直感と共感という、重要なインプットが欠かせない。妻の立場に立つだけでなく、妻の気持ちになり、また妻の人生全体という観点から考える必要がある。
さらに大事なことに、妻が片付けようとしている用事は、彼女が片付けたがっているとあなたが考える用事とは、かけ離れていることが多い*3

[例1]妻は家事が大変なのではない

本書であげられている例は以下のようなものである。

 
ある日、夫が仕事を終え家に帰ると、妻は家事を放棄して寝室に引きこもっていた。子どもはほっとかれている。

そこで夫は「妻は家事が大変で投げ出したんだ。僕が助けてあげなきゃ」と思い、すべての家事を引き受けた。

 
家事を終えて、寝室の妻のもとにいくと、彼女は怒り出した。「なんで私を放っておいたの!

夫は妻のために仕事で疲れているにも関わらず家事を引き受けたのだ。それなのになぜ怒られるのだろうか。

 
妻は家事が大変なのではなく「大人と話す時間」に飢えていたのだ。それで心が疲れてしまったのだろう。

よかれと思ってしたことが、実は見当違いということはよくある。夫は献身的な自分に酔い、自分が与えているものに気づきもしないといって、妻を自己中心的と決めつける。もちろんその逆もある。これは、企業のマーケティング担当者と顧客の間によく見られる行き違いと同じだ*4

[例2]乙女心を理解することの大切さ

恋愛に関する例ということで、ぼくの例をあげよう。

 
ある日、ぼくの彼女は少し不機嫌だった。

その日は楽しく映画をみたし、少しおしゃれなレストランにも行った。彼女がなぜ不機嫌なのかわからなかった

彼女にそれとなく聞いてみると、ぼくが「荷物を持とうか?」と聞かなかったことがよくなかったらしい。

 
言い訳をすると、決して「荷物を持ってあげる」ということが頭に入っていなかったわけではない。しかしその日は休日で大学がなかったため、教科書が入っていないから平気だと思ったのだ。

それにいつも荷物を持とうかと言っても、彼女は断って自分で持っている。

 
彼女の用事は「腕が疲れるのが嫌だ」とか「彼氏に荷物を持たせたい」というものではない。

ぼくが常に彼女のことを気遣っている。優しさを持っている」ということを認識することが彼女の用事なのだ。

そのため荷物が軽くても、実際に持つことはなくても、「荷物を持とうか?」という一言が大切なのである

[例3]若い彼氏が片付けたい用事はわかりやすい

若干極端ではあるが、恋愛に関連してもう一つ例をあげる。

 
若い男が彼女に求めるものは大体似通っている。夜に部屋で彼女と過ごすことができれば、多くの場合は満足してしまう。

恋愛経験のない彼女は戸惑う。いつも外でどんなに楽しい時間を過ごしても、彼氏は本当に満足しているようにはみえない。

彼女が想像する彼氏の用事とは、自分と同じく「楽しい時間を共有すること」だと思っているのにそうではないらしい。

 
この恋愛が長続きするかしないかは、彼氏の本当の用事を正しく理解し、それを実現することができるかどうかである。

もちろんこれは彼氏にも同じことがいえる。自分のやりたいことを我慢して、彼女の幸せのために尽くすことができるかどうかは大切なことだ。

 
恋愛を長続きさせるには相手の用事を正しく理解し、それを互いに片づけてあげようと想い合っていることが重要なのではないだろうか。

用事を間違って理解していてはいけないし、一方的に自分の用事を片づけてもらうことを優先しているカップルは長続きしない。自分の用事ばかり優先している彼氏は最低の烙印を押されかねない。

尽くすことの本当の意味

相手が本当に求めていることを理解する

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尽くすための過程でよくある間違いは、相手が本当に求めていること(用事)を誤解してしまうことである

用事を誤解しているようでは、ミルクシェイクのようにどんなに努力しても上手くいかない。それどころかわかってくれないと怒られてしまうこともある。

 
このときに「俺は相手のためを思ってやっているのに、そんな勝手な態度はおかしい」と考えているようではいけない。

それでは本当の意味で尽くしているとはいえないからだ。相手が用事を片づけられていないのに「ありがとう」といっていることが本当に望ましいことだろうか。

相手が本当に求めていることを理解することは、尽くすための大前提なのだ。用事を理解せずにただ努力しているだけでは尽くしているとはいえない

長続きするカップル、最高の夫婦とは

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長続きするカップル、最高の夫婦がどんなものなのかは、以下の文章がわかりやすく説明してくれている。

先ほども言ったように、お互いの用事を理解し、うまく片づけ合っていることが大切なのだ

逆に長続きしない恋愛をしてしまう人は、相手が自分の用事を片づけてくれるかということしか期待しない。そしてそれができない人とはおさらばし、別の人を探しにいく。

しかし、これを続けていてはなかなか「運命の相手」には出会えない

片付けるべき用事のレンズをとおして結婚生活を見れば、お互いに対して最も誠実な夫婦とは、お互いが片付けなくてはならない用事を理解した二人であり、その仕事を確実に、そしてうまく片付けている二人だとわかる。
この気づきは、わたしに計り知れない影響をおよぼした。妻が片づける必要のある用事を心から理解しようとすることで、妻への愛情がますます深まる。妻もおそらく同じように思ってくれていることだろう。
これに対して離婚は、自分の求めるものを相手が与えてくれるかどうかという観点から、結婚生活をとらえていることに、原因の一端があることが多い。与えてくれない人はお払い箱にし、別の人を探すという考え方だ*5

幸せにしてくれる人ではなく、幸せにしたい人を探せ

どんな人と一緒にいるべきかということに関して、本書は素晴らしい言葉を残している。

自分を幸せにしてくれる人を探すだけではいけない、自分の人生をかけてでも幸せにしてあげたいという人と一緒にいるべきだということだ。

年収や地位といった指標のみで結婚相手を探している人は、この以下の言葉を重く受け止めるべきだろう。

意外に聞こえるかもしれないが、人間関係に幸せを求めることは、自分を幸せにしてくれそうな人を探すだけではないと、わたしは深く信じている。その逆も同じくらい大切なのだ。つまり幸せを求めることは、幸せにしてあげたいと思える人、自分を犠牲にしてでも幸せにして上げる価値があると思える人を探すことでもある*6

一方的に尽くすという幸せ:ガンの父と過ごした時間

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相手の用事のために尽くすということは不幸だと考える人もいるだろう。そしてずっと尽くしていると嫌になってしまうのではないかと。

しかし著者は、自分を犠牲にして相手に尽くすと、むしろもっと相手に尽くしてあげたくなると述べている。これは恋愛だけではなく、家族や友達、組織にも当てはまるという。

 
最後にこの本の著者クレイトン・M・クリステンセン教授の経験を紹介する。

著者の父がガンになって、それが治らないとわかったとき、著者は留学先のオックスフォード大学から戻り、家族で父の世話をしたという。

父はデパートに勤めており、著者が小さいときはよく仕事を手伝っていたという。もちろんそのとき子どもだった著者が仕事の役に立っていたかはわからない。しかし少なくとも父によって"仕事をしている気"にはなっていた。

父が働けなくなると、著者は父の代わりにデパートで働くことを申し出た。ある週にはオックスフォード大学で勉強し、次の週には帰省してデパートで働いたという。

これは一方的に父に尽くしていたといえる。

しかし著者はこれを不幸だと感じたことはない。むしろもっとも幸せの一つだったという。なぜならば、それは人生の大切なことを投げ出してまで、家族のために尽くしたからである

まとめ

  • 相手の本当に求めているもの(用事)は簡単には理解できない
  • 用事を誤解しているのに尽くしても意味はない
  • 尽くしているのに恋愛が上手くいかなかったり、夫婦ですれ違うのは、用事を理解していないから
  • お互いの「用事」を理解し、それを片づけることに尽くし合えることがベストである
  • 用事の理論を踏まえれば「幸せにしてくれる人ではなく、幸せにしたい人を探すべき」だとわかる

恋愛や夫婦をテーマに説明してきたが、前述したようにこれはあらゆる物事に応用できる理論である。

企業においてもマーケティングという形で理論化されている。

 
相手の用事を理解せずに尽くすということは、自己満足でしかない。相手の用事を正しく理解したあとに努力することが尽くすということである

そしてお互いの用事を正しく理解して、用事を片づけ合うことができれば、その恋愛は長続きするし、円満な夫婦生活を送ることができる。

家族の求めているものを誤解して、収入や家族"サービス"を提供しているだけではなかなか上手くいかない。

 
本書のなかでも特にわかりやすく、感動的でそして大切な部分だと思う。ぼくも定期的に読み返したい。

連載:人生を豊かにする理論(イノベーション・オブ・ライフ)

  1. 人生の決断をするときには「理論」を使うとうまくいく
  2. お金だけでは幸せになれない。とある理論が教えてくれること
  3. 人生は計画通りにいかなくてもいい。偶然を意図に変える戦略
  4. 目標達成のためには適切な「資源配分」をしなければいけない
  5. 家族や友達とのつながりの大切さを教えてくれる理論の話

*1:この場合ミルクシェイクの対抗商品はバナナやドーナツなど。そのため食べるという表現がふさわしい

*2:クレイトン・M・クリステンセン(2012)『イノベーション・オブ・ライフ』翔泳社 p.125

*3:同上 p.125

*4:同上 p.127

*5:同上 p.128

*6:同上 p.128-129

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