感情論と「感情的」は違うもの。感情的であることは悪いことなのか
「感情論じゃないか」「感情的になるな」などと言われたことはありませんか?
感情は建設的な話し合いを阻害したり、理性を邪魔したりするものであり、ビジネスなど社会生活における場面では表に出してはいけないものだと考えられています。このように感情は嫌われやすい存在です。
しかし、私たちが考えているほど感情は避けるべき存在ではないことがわかっています。
「EQ」のハンドブックによると、「成果を上げているビジネスマンや研究者の行動を詳しく研究したところ、知識や推論などのIQ的な能力だけでなく、自分と他者の気持ちがわかり、感情を上手く調整する力が発揮されていることがわかった」といいます。
感情をポジティブに活用していくことが、むしろビジネスなどの場で成果をあげるために役立つというのです。
感情的と感情論は違う
よく感情的であることと感情論は同じものであるかのように扱われますが、実際は両者は異なるものです。
まずは感情論の定義について確認してみましょう。ある程度、人によって定義が異なりますが今回は以下のように定めます。
感情論とは主張を支える最大の論拠が、論理性のない自身の感情である議論のこと。
「くそっ! あいつは全く人の意見を聞かない。最低の人間だ!」
上記の定義に基づくと、この発言は感情的ではありますが感情論にはなりません。
なぜなら「最低の人間だ」という主張を支える論拠として「人の意見を聞かない」という論理的なものがあげられているからです*1。
「あいつは最低の人間だ。どうしても気に食わない」
この発言は感情的ではありませんが感情論です。
「最低の人間だ」という主張を支える論拠が「気に食わない」という自分自身の感情でしかありません。
このように感情的であることと感情論は異なるものです。
少し気持ちを込めて発言するだけで、「おいおい、感情論はやめてくれよ」と言いクールであることを装う人は明確に感情論の意味を知らないのかもしれません。
感情的であることは悪いことなのか
感情的であることと感情論の違いを説明しました。
社会的な場において「感情論」は好ましくないことは容易に想像できます。個人の感情だけをもとに議論することは当然論理性を欠きますし、論理的でない議論を社会的な場でするべきではありません。
しかし感情的であることに関してはどうでしょうか? 本当に感情的であることは悪いことなのでしょうか?
感情は行動に影響する
感情は行動に大きく影響することは広く知られています。
怒っているときは言葉が荒くなりがちですし、落ち込んでいるときは集中力を失い失敗することが多くなることがあるでしょう。
逆に気分がいいときはいつも以上に効率的に行動ができたり、挑戦しようという気持ちになったりします。
冒頭に述べたように、感情は上手くコントロールできれば、むしろ大きな成果ことに繋がることは科学的に証明されているのです。
感情的であることは悪いことではない
感情が成果をもたらすこと以上、感情的であることは一概に悪いとは言えないのではないでしょうか?
もちろん感情を常に全面に押し出せというわけではありません。とにかく押さえつけるべきではないということです。
感情をコントロールするとは、感情を抑えることだと思われがちですが、感情を自らの意志で出していくこともまたコントロールだといえます。
感情的であることが必要な場面では感情的に、冷静であるべきときは冷静にと、感情をコントロールことが大切なのではないでしょうか。
「これだけデータが揃っているんだ! これで挑戦しないでこれ以上の成長が望めるとは思えない!」
仮にこの発言が論理性を欠いていないとしたとき、こうした「熱い」発言が周囲を動かし、優れた成果を生み出すことがあります。
演説やプレゼンテーションが上手いと言われる人たちも、ときとして「感情的」になることはありますし、そうした姿が人々の感情を動かしているのではないでしょうか?
上記のような発言を聞いたときに「感情論では話にならない」と言い、議論すらしないことは致命的です。
感情論と感情的であることを混同してしまっています。感情論は好ましくありませんが、感情的であることは必ずしも否定されるべきではありません。
感情的であるから議論をしないという判断は間違っています。その感情が優れた成果を生み出すこともあるのです。
もし感情的であることがどうしても気に入らないのであれば、論理的な根拠を示さなければいけません。
まとめ
- 感情論と感情的であることは違うもの
- 感情論は好ましくないが、感情的であることは悪いことではない
- 感情はときとして優れた成果を生み出す
- 感情をコントロールすることが大切
- 感情的であることは受け入れられるべき
今回は感情についてのは話をしました。紹介した感情に関する研究結果と今回の主張が厳密に言えば結びついていると言えない部分もありますが、感情の重要性を語るうえでは有効だといえるでしょう。
確かに感情的であることを肯定的に説明しましたが、知らぬ間に感情論になってしまっている人は多いため、常に注意しなければいけません。
また、常に感情的であることがよいというわけではありません。コントロールできることが重要なのです。
ですが感情的であることは、社会的な場でもタブーとされるべきではなく、感情をポジティブに活用していくべきだということには変わりありません。
*1:もちろん人の意見を聞かないという論拠にも明確な根拠があることが求められます