ジブンライフ

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社員が経営者目線を持つことで業績が向上した会社の実例

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なぜメンバーにもリーダーシップが必要なのか。全体最適の重要性。 - ジブンライフ」という記事に関して質問をいただきました。

なぜ、メンバーにもリーダーシップが、必要なのかという、2015年9月21日の記事を大変興味深く読ませて頂きました。
実際に、一社員でも、すぐにリーダー経験の機会を与え、会社運営を、成功させていっている企業は、あるのでしょうか?
もし、ご存知であれば、企業名を教えて頂きたく、ご連絡させて頂きました。

「メンバーである一社員にもリーダーの経験を与え、リーダーシップを身につけさせている会社」の実例についての質問ですね。

ぼくの記事でも書いたように、確かにリーダーシップはリーダーを経験することによって身につくものですが、それ以外でもリーダーシップを身につけさせる手段はあるんじゃないかなと思います。

「メンバーにもリーダーシップが必要だから、順番にリーダーを経験しましょう」なんて方法も思いつかないこともないですが、今回は好例が多い別視点から質問に回答してみます。

紹介するのは『全員経営』本に紹介されている有名な会社の実例です。この本、大学1年生でもすらすらと読めて、色々勉強にもなるのでおすすめ。特に最初の日本航空の事例なんて感動モノ。

というわけで、社員に採算意識を持たせる・社員が経営者の意識を持つ解説していきます。

アメーバ経営で社員に「採算意識」を持たせる実例

社員一人ひとりが利益を意識して行動している会社はそうありません。営業の方が売上を意識していたとしても、「費用を引いていくら利益が出たか」までは考えないでしょう。

直接利益をあげない間接部門の社員も同様の傾向があると思います。アメーバ経営は、そんな社員が採算意識を持つようになる経営手法です。

アメーバ経営の概要

アメーバ経営は稲森和夫という経営者が考案したものです。

稲森氏は京セラ、第二電電(今のKDDI)の創業者で、経営破綻した日本航空をV字回復させました。

アメーバ経営の簡単な定義は以下の通り。

組織を小集団に分け、その小集団ごとに業績を分かるようにし、採算意識や組織へのコミットメントを高める経営手法。独立採算制によって自由度の高い運営をし、自分たちで経営の数字を変革することで時間あたりの採算の最大化を目指す経営手法。

アメーバ経営では、会社や部署という単位よりもさらに小さな単位を設け、その単位あたりに利益などの数字を計上させます。そしてその数字を管理するのは小さな単位に所属する社員というわけです。

 
ちなみに「アメーバ経営 | 稲盛和夫 OFFICIAL SITE」では以下のように説明しています。

アメーバ経営では、組織をアメーバと呼ぶ小集団に分けます。各アメーバのリーダーは、それぞれが中心となって自らのアメーバの計画を立て、メンバー全員が知恵を絞り、努力することで、アメーバの目標を達成していきます。そうすることで、現場の社員ひとりひとりが主役となり、自主的に経営に参加する「全員参加経営」を実現しています。

数字を見えるようにする

小さな単位あたりの数字が見えるようになると、社員一人ひとりが数字を意識するようになります。

普通の会社でも決算で利益は計上されますが、数百から数万の人たちの成果を全て合わせた結果でしかありません。ひとりの社員が利益に貢献している数字は微々たるもの。

そんな状態で、常に会社の利益を意識して行動することは難しい。

チームワークの心理学』によると、全体の成果に対して、個人の貢献が見えづらい状態だと社会的手抜きが起こりやすい」と述べられています。

まさに、会社という大きな組織の成果(会社の利益)に対して、ひとりの社員の貢献は見えづらいものだといえます。

アメーバ経営は会社という単位を細かく分割することによって、ひとりの社員の貢献を明確にし、モチベーションをあげようという経営手法なのです。

アメーバ経営における数字は、自分たちで自立的に生み出す「意味ある数字」であり、強いコミットメント(主体的関与)が引き出されます(p.79)。

アメーバ経営の導入による採算意識の向上

全員経営』では、アメーバ経営によって、経営破綻に追い込まれていた日本航空全体の採算意識が向上していく様子が描かれています。

キャビンアテンダントは、機内に持ち込む自分たちの荷物の減量作戦を始め、オフィスに体重計を置いて、「1日1人500グラム減」に取り組んだ。荷物が軽くなれば、わずかでも燃料の節約に結びつく。泊まりがけの国際線に勤務する場合は、シャンプー一つも毎回小分けにした(p.65-66)。

「航空機が着陸態勢に入るには、車輪を出したり、フラップを下ろして、翼の面積を広くしたりしなければなりません。その分、抵抗が増し、燃料が消費されます。[……]何よりもまず安全に最大限配慮しながら、様々な工夫を重ねると、1回のフライトで燃料が何百キロ、金額にして何万円も節約できます(p.66)。

このほかにも、移動時間を1分短縮して人件費を浮かそうだとか、社員が率先して経費削減に努める事例が多くあげられています。もちろん、売上の向上を目指す行動もみられるようになりました。

経費削減というのは、会社のトップが頭を悩ませるような問題です。そんな経費削減に対して、社員一人ひとりが意識を持って取り組む、まさにメンバーはリーダーの意識を持って行動しているという好例ではないでしょうか。

社員が経営者としての意識を持つようになった

誰もが経営者の意識を持ち、『私が日本航空を支えていくんだ』という意識が浸透していった。計画を上回る業績をあげることができたのは、意識改革があってこそだと私は思います(p.70)。

上記のように、2017年現在・日本航空の社長の植木氏は「誰もが経営者の意識を持ち、『私が日本航空を支えていくんだ』という意識が浸透していった」と述べています。

会社のリーダーである経営者の意識を、誰もが持っている。リーダーシップと経営者の意識というのは、同じものではありませんが、メンバーがリーダーとしての意識を持たせることに成功し、それがV字回復の一因になったという事例です。

まとめ

  • メンバーにリーダーの意識(リーダーシップ)を持たせる方法はリーダーを経験させること以外にもある。
  • アメーバ経営は組織を小集団に分け、自分たちで経営の数字を時間あたりの採算の最大化を目指す経営手法。
  • アメーバ経営は社員の採算意識を向上させる。一人ひとりが経営者の意識を持つようになる。

アメーバ経営や日本航空という例は、知っている人からすればベタすぎる例かもしれませんが、まずは有名なものから知っておくと良いのではということで紹介しました。ベタなだけあって、アメーバ経営や日本航空V字回復の解釈も色々あったりするので調べてみたら色々出てきます。

アメーバ経営に関しては稲森氏自身が本を書いておられますね。

この事例は「メンバーにリーダーの意識を持たせることに成功した実例」であると同時に「メンバーがリーダーの意識を持たせることで企業業績が改善した実例」でもあり、その点でも価値があると思います。

実際のところ、「全員経営」「社員が経営者目線を持つ」なんて考えはキレイごととして捕らえられがちでしょう。会社によってはなんとも微妙なものもありそうですから、ぼくもキレイごとという考え方を全否定できません。こんな記事もあったり。

従業員に「経営者目線を持て」という謎の要求 | あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

おおざっぱにいって、ブラック企業的な「経営者目線」なんてものもごめんですし、経営者目線の内容やどのようにその意識を芽生えさせるかは考えどころでしょう。

 
とりあえず、本日紹介した本はおすすめ。「全員参加の経営」「社員が経営者目線持つ」というテーマについて、専門家の見解も含まれているし、読むのも楽しいので。

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